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「原曲に基づく新イタリア歌曲集」 [声楽]

声楽を勉強する人が必ず使うパリゾッティ版のイタリア古典歌曲に関して19世紀的な解釈であると言う話を何度もしてきました。収められている曲は17世紀初めから18世紀終わり頃までと幅広く、マドリガーレだったりバロックオペラのアリアだったりします。つまり通奏低音の伴奏なのですが、一般的にイタリア古典歌曲を歌う際にはパリゾッティがロマン派的な音楽観でリアライズした伴奏譜に合わせて歌います。
通奏低音の演奏法に慣れていない私たちは、たいていの場合パリゾッティ版を使ってピアノ伴奏で歌うしかないのですが、同じピアノ伴奏でも通奏低音譜からきちんとリアライズした楽譜があるというのは知っていました。音楽の友社から出ている「原曲に基づく新イタリア歌曲集」(ジョン・グレン・ペートン編著)です。

原曲に基づく 新イタリア歌曲集

原曲に基づく 新イタリア歌曲集

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2007/08/29
  • メディア: 楽譜



以前ちらっと立ち読みしたことがあったのですが、今知人から貸していただいているところです。Amazonでは中古しかなくてしかも倍のお値段になっています。音友にも僅かしか残ってないようですが・・・?(こちら

例えば"Amarilli mia bella"ですが、歌詞が一部違います。パリゾッティ版では♪dubitar non ti vale(疑ってもあなたにとって甲斐がない)♪になっていますが♪Prendi quest mio strale(私の矢を取って)♪になっています。(古楽演奏ではこちらが常識になっています。)
またパリゾッティ版では4/4であるのに対しこちらは2/2です。解説を見ると、本来は4/2であるけれど「読譜を容易にするために小節線を加えて2/2にしたとのことです。ペートン氏は「4/4という不適切な拍子記号が、歌手たちにこの曲を非常にゆっくりとしたものと解釈させ、規則的な四分音符の動きは拍節感を大変厳密なものにしてしまっている。」と述べていますね。また当然装飾の付けかたが違いますし、メロディーの違いもあります。


それぞれの曲にいろいろな違いがあるのですが、"Gia il sole dal Gange"は次のような違いがありました。
(パリゾッティ版)
☆拍子・・・3/4
☆7小節の前奏(歌の初めとほぼ同じメロディー)のあと♪Gia il sole dal Gange,Gia il sole dal Gange,piu chiaro,piu chiaro sfavilla・・・♪
☆言葉を繰り返して使うことによって長いパッセージを短く切っている。

(新イタリア歌曲集)
☆拍子・・・3/2
☆前奏はほとんどなく(アウフタクトで歌が始まるが1拍目と2拍目にあるだけ)、♪Gia il sole dal Gange,Gia il sole dal Gange♪の後に再び♪Gia il sole dal Gange,Gia il sole dal Gange♪と歌う。
☆長いパッセージがある

「ガンジス川から」というのは「東方から」を意味する単なる言い回しだそうです。また、舞台は北アフリカのアルジェリアなのですね~。

この音友から出ている楽譜を手に入れている人は古楽奏法に興味のある人で限られているのではないのだろうかと言う気がするのですが、巻末の著者の略歴を見るとアメリカでは主要な音楽学校の教科書として採用されているようです。
解説も充実していますし、通奏低音譜の読み方がわからなくても通奏低音楽器が演奏できなくても普通にピアノ伴奏で弾けますし、やっぱり持っておきたいですね。


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コメント 9

伊閣蝶

これは大変興味深い楽譜ですね。
古典歌曲を原典の通奏低音からリアライズするのみではなく、拍から歌詞まで違っているとは驚きました。
このような楽譜があること自体、初めて知りましたので、是非とも読んでみたいなと思います。
ただ、古本でしか入手できないのは残念な限りですね。
仰る通り、これを使って歌おうとする方が極端に少ないせいなのでしょうか。
米国では主要な音楽学校の教材として使われているとのことですから、もっと普及してもいいように感じます。
私も、例えば「Gia il sole dal Gange」は歌っていますので、この違いは大変興味深いところです。
by 伊閣蝶 (2011-11-30 10:59) 

Cecilia

伊閣蝶さん、nice&コメントありがとうございます!
声楽を学んでいる人が古楽への関心が高いと良いのですが、一般に声楽(科)と古楽(科)には何だか大きな壁があるように感じています。この時代の声楽曲に関しては声楽を学んでいる人よりも通奏低音の楽器を学んでいるのほうが深い理解をお持ちだと思います。もっとも発声法に関しては声楽の人のほうが上かもしれませんが。イタリア古典歌曲が声楽初心者の通過点みたいに考えられている傾向がいまだに強いのは悲しいことだと思います。

by Cecilia (2011-11-30 13:26) 

Cecilia

タッチおじさんさん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2011-12-07 08:20) 

Cecilia

九子さん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2011-12-09 08:34) 

Cecilia

yukiyukiさん、niceありがとうございます!

by Cecilia (2011-12-10 07:06) 

Cecilia

かあかさん、niceありがとうございます!
by Cecilia (2012-01-03 07:52) 

いのうえ

コメントするのは、多分初めてと思います。
以前から、バリゾッティ版には苦労してきたので、とても良い楽譜をご紹介いただきありがとうございました。

今、AMAZONでみたところ、新品の在庫が2冊ありました。
私が一冊注文したので、あと一冊です。

使ってみての感想は、また別の機会に・・・
それでは失礼します。
by いのうえ (2012-01-07 15:06) 

Cecilia

いのうえさん、はじめまして。
コメントありがとうございます!
そちらのサイトも拝見させていただきました。
注文されたとのことですが、私の記事がお役に立ったようでうれしいです。
パリゾッティ版に苦労されたというのはどのような点なのか気になります。
私は苦労はしていませんし、あれはあれで良いのかなと思っていますが、古楽愛好家の立場から、「やっぱり違う」と思って使っています。
感想をお待ちしています。
by Cecilia (2012-01-09 11:12) 

さかもと

「原曲に基づく 新イタリア歌曲集」は中古でも高くて買えませんが
海外版のペートンのイタリア歌曲集はだいぶ安く買えます

おそらく中身は同じだと思われます。

ご参考までに…
by さかもと (2017-11-05 23:15) 

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